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パリにおける仕事・日常生活の忘れな草


by vwpolopolopolo
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「日本人としてこれだけは知っておきたいこと」その1

標題の本を日本から取り寄せて読んでいます。著者は中西輝政氏。以前からこの人の「大英帝国衰亡史」などを読んで、面白く思っていた人です。

氏の5年前くらいの著書(題名は失念しました。)で、今の若者が日本を大切に考えたり、日本人であることに誇りを持つためには憲法を日本人自らの手で作り換えていかなければならない、その過程で日本のあるべき姿があぶり出され、日本に愛着が出てくるといった趣旨の主張がされていて、その通りだなと思った反面、あまり当時声高にそのようなことを主張する人がいなかったため実現可能性について疑問も持っていました。

今般安倍総理になって、中西氏が総理と近い関係にある人と聞いて、安倍総理が憲法改正を主張するのはこの中西氏の考え方に影響されているのだろうなと想像しています。個人的には憲法を自らの手でという考えには賛成です。

以下中西氏の指摘で記録しておきたい点を書き留めます。

第1章 歪められた自画像

・GHQによる日本弱体化の要諦は、日本人から歴史とアイデンティティを奪うこと。二度と米国の脅威とならないように、日本固有の神道、皇室、歴史教育を全面否定。諸外国では歴史という科目があるのに、日本では「歴史」を社会科((米国に歯向かわない)良き市民を育成する科目)として教育することとなった。

・「米国とは一戦交えたが、シベリア抑留などしたソ連よりはまし」との観念が日本人の中にあり、米ソ冷戦体制では、日本がどちらのサイドにつくかは既定路線であった。占領下GIが気前良くチョコやガムをくれたがそのような行為も米本国の指導によるものであった。

・憲法9条が平和を保ったという誤謬。9条と平和に関連性を見出せない。戦後60年の平和は米ソ冷戦下の核による均衡によるところが大きかった。話を日本に限定すれば、日米安保が平和を保った。9条があっても日米安保がなければ、共産・暴力革命が起こった可能性が高い。米国が日本の革命勢力、その背後にいた中ソを牽制したため、「安保騒動程度」で済んだ。

・戦後の民主化と平等化(農地改革など)は高度成長との因果関係はなし。平等化については社会主義の崩壊を見れば分かる。軍事支出を削ったことも高度成長の要因と指摘されるが、中国、韓国、台湾、ASEANの高度成長をする国々が軍事費を多く計上していることと整合が取れない。高度成長の理由は、国際的要因(西側に属し有利な輸出市場を持ったことによる)が大きい。また、「日本が駄目なのは国際化されていないから」との言説の中で、過去の日本的なものを否定する(日本的色彩を薄める)のは危険。

・GHQ(米国の中でも共産主義に傾いた面々が多数いた模様。)は戦後日本を社会主義の実験場とした(例として、農地解放、財閥解体)。その成功をもって米国革命につなげようと目論んでいたふしがあり。左派マスコミ・知識人、(革新)官僚にも一枚噛んだものがいた模様。

・近現代史は60年で変動。例としてナポレオン。ナポレオンの対ヨーロッパ戦争の後60年は、最大の悪玉と忌み嫌われた。それが普仏戦争でフランスはプロイセンに敗北し、イギリスにとってもドイツにとってもフランスは恐れるに足る相手でなくなり、ナポレオンの評価がタブーでなくなった(むしろその後ドイツの台頭に諸国の目が集まった。)。日本もバブル崩壊、少子化で旧連合国は日本を危険国と看做さなくなり、戦時の公文書が公表され始めた。そこには「日本人に戦前を全否定させる」ことを画策した形跡が伺える。中国共産党の公文書も公表されるようになれば、日本人の戦前を否定する歴史観は大きく変わろう。

・米国は、近時上記のような日本を弱体化させる戦略を転換して、日本にもう過去にケリをつけてほしいと思っている模様。米国の庇護の元から少しづつ離れ、例えば台頭する中国に日本独自で注文を付けるようになってほしい、それが米国の国益に叶う、と考えている模様。

第2章 あの戦争をどう見るべきか

・日露戦争が大東亜戦争の原因というのは誤り。40年近い開きがある。また、その40年間には大正デモクラシーがあり、軍縮を進めた時代で、軍人が蔑視されていた時代であり、断絶あり。

・最大の国難は中国問題。コミンテルンは中国への革命の輸出を画策。中国に利権を持つ帝国主義勢力に打撃を与えることを意図。

・中国での北伐勢力を牽制する列強からの同盟申し入れに、幣原外相は乗らず弱腰外交へ。これを訝ったイギリスが北伐勢力の目を反日にそらすように企図。

・近時公表の米国の公文書で、ハルノートの起草者はコミンテルンのエージェントと化した人物が関与したことが明らかとなっている。これはソ連はドイツと日本との2正面交戦を避けて、日米開戦を望んでいたため。日本では尾崎秀美が近衛内閣で暗躍。

・日独伊3国同盟の松岡外交は問題ありとの評価がされる一方で、戦後、実際は不作為であった幣原外交が模範とされているが、再考の余地がある。

・中国との関係は聖徳太子が言った「対等」に尽きる。仏教というインド発の当時の国際スタンダードの枠組の中で(双方の土俵と離れて)、中国と対話しようとした。今後は、中国では全く念頭に置かれていない「アジア主義」などに拘泥せず、国際ルールの中に日中関係を置いて、双方ドライに主張しあうべき。

長くなってしまったため、残りをまたメモって明日以降に思うことなど書きたいと思います。
by vwpolopolopolo | 2006-11-04 22:30 | 日常生活